ゴッドファザー、なにそれ?

 9月に入って、シチリアも、夜は涼しい風が吹くようになった。一昨日ぐらいから毛布をかけなければ風邪をひきそうだ。北半球の季節は同時進行するのだ。

 シチリアと言えばマフィア。マフィアと言えば映画「ゴッドファザー」というのはあまりに単純な連想ゲームである。 イタリア語学学校のあるタオルミーナの駅=写真=は、ゴッドファザーのロケ地だったと、現地で知り合った日本人に教わった。パート3で、アルパチーノが元妻を出迎えるシーンが撮影されたそうだ。
 イタリア語の授業で、好きな映画を言い合う時間があった。子どものころ、自転車泥棒や鉄道員なんかを日曜洋画劇場で見ていたし、基本イタリア映画は大好きだ。僕は、mi piace il film god fatherと言った。女の先生と他の学生(アメリカ人2人、フランス1人)はキョトンとした。もう一度、ゴッドファザーと、大きな声で言った。沈黙が続く。よっぽど発音が悪いのか? こういう時が一番冷や汗が出る。3度目にゴッドファザーと言っても「ナニソレ」状態は変わらない。

↑↑↑ イタリア語学校「バビロニア」の入口(上)授業風景(下)

 話題を変えようと思ったその時、誰かがポツリと言った。

 「イル•パドリーノ」

 イタリア語で「Il padorino」と書く。
 「ザ•父ちゃん」と翻訳すると、あまりに軽々しくなるが、ここではあの映画はイル•パドリーノと呼ぶのである。というか、日本語の翻訳ゴッドファザーは、現地シチリアでは使われていない。マーロン・ブランドは、ゴッドファザーではなく、イル•パドリーノなのだ。
 間違いない。街角のTシャツもそう言っている。
 シチリアといえば、たくさんの名作がある。mi piace il film ‘ニューシネマパラダイス ‘と言っても、通じなかった。

 ヌオーボ チーネマ パラディーゾなのである。

 言葉は原典で覚えなければ、と切実に感じる今日この頃である。
 
 シチリアについて、何も知らずにやって来たが、映画は重要な案内人である。中学のころに見たゴッドファザーの主演マーロンブランドの重厚感、そしてアルパチーノのカッコ良さ。乾いたシチリアの空気がスクリーンを通して伝わってきたことを思い出した。
 土曜日の昼下がり、タオルミーナ駅に立ち寄った。イタリアの辺境、シチリアにも鉄道が走っているんだ、と上から目線で駅舎に入った。日本で初めて鉄道が走ったのが、新橋だった。アテンドの女性は「すでにあの頃、ここで汽車は走っていたのですよ」と教えてくれた。シチリア、恐るべし。というか、2000年前にできたタオルミーナの「teatroギリシア」は今でもコンサートに使われている。
 恐るべしシチリア!
 この地中海最大の島の前では、日本の歴史の浅さにうなだれ、感動させる不朽の名画の数々に圧倒されるばかりである。

定年後、荒野をめざす

五木寛之の「青年は荒野をめざす」に感化され、22歳の春、旅に出た。パキスタン航空の格安チケットを手に入れ、カリマーのアタックザックひとつでアジア、ヨーロッパをさすらった。そして再び、旅心に囚われ、36年間勤めた新聞社を辞め、旅に出る。(中村 正憲)

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