再びのシチリア

 

 1年9ヵ月ぶりにシチリアにやって来た。トルコ航空で20日22時に関西空港を飛び立ち、イスタンブール経由でシチリア南東部のカターニア空港に着いた。乗り換え時間も入れて、約17時間。


 離陸前の19日、イラン大統領を載せたヘリが墜落したとの報道に接して、「そのあたりが飛行コースだ」と、いささか緊張のフライトだった。イラン、トルコ国境付近は確かに濃霧が立ち込めていた。黒海をかすめ飛ぶと、北方のウクライナではまだ、ロシアによる侵略戦争が続いている。その辺りになると、緊張が高まってくる。
↑ トルコ航空の飛行ルート。イラン周辺から黒海上空を通った。


 今回の旅の最初の4日間は、大阪のイタリア料理の名だたるシェフたちと一緒だ。まずは、カターニアの市場巡りから始まった。カジキマグロを味見したり、血液を詰めた豚の腸を生でかじったり、ピスタッキオを吟味したり。シェフらに勧められるまま、試食の市場めぐりとなった。



 シチリアは、2800年前のギリシャ人の来訪に始まり、ローマ帝国、ノルマン、イスラム、神聖ローマ帝国、アラゴン、ファシスト、米軍と様々な民族から支配された。なぜに、これほどまで狙われたか、その訳が、市場に来てわかったような気がする。人間の欲望は舌と胃袋から、成り立っているのだ。肉、魚介、野菜、果物、ワイン、チーズと、ふんだんな食料がこの島では調達できる。

 市場から空を見上げると、色とりどりの傘が揺れていた。イタリア人の遊び心と街に潤いを吹き込むセンスには、いつも唸らされる。

 われわれは、昼飯は魚とパスタをいただき、夜は馬肉を頬張った。合わせたのは、エトナ山麓で作られている白と赤のワイン。ネレッロマスカレーゼとネレッロカプッチョの赤は、薄い色合いなのに、喉越しを通る時、新鮮な空気を運んでくれるように味わい深い。時差ボケの身体を蘇らせてくれた。

 馬肉を食べたトラットリアは、ウルシーノ城を見上げる位置にあった。神聖ローマ帝国の国王で、シチリア王だったフェデリコ2世(1272-1337)が築いたという。十四夜の月が城壁の上に載っていた。

↑ 13世紀に建造されたウルシーノ城。1699年のエトナ山噴火で周囲が溶岩で埋まったという

 長い間、休んでいた旅ブログ「定年後、荒野をめざす」を再開します。誰も読んでいないので、こんな断り書きは不要かと思いつつ••••。
 今回の旅は一ヵ月。シチリアから、最後はドイツのミュンヘンまで、鉄道で北上して行きます。
⚫︎最初の傘の写真に表示される日付4月25日は、5月22日の誤りでした。

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定年後、荒野をめざす

五木寛之の「青年は荒野をめざす」に感化され、22歳の春、旅に出た。パキスタン航空の格安チケットを手に入れ、カリマーのアタックザックひとつでアジア、ヨーロッパをさすらった。そして再び、旅心に囚われ、36年間勤めた新聞社を辞め、旅に出る。(中村 正憲)